第14話|営業のはなし

扉を開いていなければ、治療院は話になりません。そのため、患者さんに紛れて、いろんな業種の営業屋さんが、次々と声をかけて来ます。

たわいもない話から、絶対に裏がある怪しい話まで、その数々を大公開します。

電話ノ巻
●「×××という金融会社ですが、無料でカードを作らせていただけませんか? ステイタスにもなりますし……」
●「切手袋やキャッシュディスペンサー用の現金封筒に、広告を出しませんか? お宅のような治療院にはひったりだと思うのですが」
●「駅のホームに看板を出しませんか」
●「文字放送テレビを待合室に置きませんか? 広告も流せます」
●「ホームページはお持ちですか?」 ●「博多の明太子屋ですが、院長先生はいらっしゃいますか?」
●「今、ゴムの相場が狙い目なんですが、院長先生に投資をしていただけませんでしょうか?」
●「バスの窓に広告を出しませんか?」

多い時には、1日に5件以上もかかって来ます。こういう問い合わせは、院長に取り次がずに、すぐに切ることにしています。たいていは一言で断れるのですが、ある時、強敵と遭遇してしまいました。
粘り強くてファイトに溢れ、営業マンの鏡のような方でした。断っても断っても食い下がって来るので、僕も真剣に応対しました。
「そんなお金があるんなら、もっと給料を上げてもらいます。時間の無駄ですので、2度とかけて来ないでください」
と返したところ、しばらくの間、僕が受話器を取ると、無言で切れてしまう現象が続きました。

変わったところでは
●「あの、馬油石鹸の試供品をお送りしてもよろしいですか? 1度お使いになってみてください」  とりあえず試供品は送ってもらいます。
●「×××というバラエティー番組を担当していますが、ばつゲームで足裏の強烈な指圧をやってもらえませんか」(HPを見て、手当たり次第にかけているんじゃなかろうか)

そして、たまーーーに
●「×××という雑誌の者ですが、ホームページを見てお電話しております。今度マッサージの特集ページを作るのですが」
という、うれしい取材の問い合わせです。
でも、取材をしてもらうにはばく大なお金を請求される場合もあるので、安請け合いはできません。
「タダなら取材してください」
これを言わないと、後で後悔することになります。タダと分かると、今度はちょっと大きな声で、患者さんにも聞こえるように、
「院長、×××って雑誌から取材の依頼がありました」  まったくこざかしい奴なんです、僕は。
こういった美味しい話をもって来てくれる人たちは、ほぼ100パーセント「ホームページを見たのですが」とおっしゃいます。ネットの力はすさまじい!

来院営業ノ巻

●生命保険、レンタル掃除用品、有線放送、事務所用コーヒーマシーン・レンタル業などの勧誘
●乳酸飲料のお姉さん、置き薬の兄ちゃん、雪の下りんごの兄ちゃん、宅配弁当屋
●輸入雑貨(ラジオ付きライトやキッチン用品、時計などなど)の訪問販売
●「ビールとアイスを付けますから」としか言わない新聞屋。どうして、ウチの新聞はここが良い、と言えないんだろう?
●何度断っても現れる電光看板のセールスマン。
●無料配布のタウン誌や地域情報紙への広告掲載のお願い。(酒癖の悪い記者が居着いてしまって困ったことがあります)
●「町の地図を作ったので、お宅の名前を載せさせてください。1年1万円です」
歩道橋下などのガードレールに無断で取り付けて、後は知らないという、違法行為の危ない面々。

忙しい時に限って、こういう人たちは次々やって来ます。暇なだと、かなり惨めな気分になります。

ダイレクトメールの巻

居酒屋のチラシと共に、たくさん舞い込んで来ます。
多いのは治療器具や健康食品、漢方薬、ハーブなどの広告ですが、まれに、フザケた封書やハガキが届きます。

●明細書や請求書が入って来るような、窓つきの封筒には、ウチの広告が載っているタウンページの切り抜きと、振込用紙が入っています。一瞬NTTの支払い請求と思ってしまいます。でも、電話帳広告料金は、自動引き落としです。
実はこれ、知らない会社が勝手に作ろうとしている、あるいは作るフリをしている電話帳の、広告掲載料金の請求書なのでした。それっぽい『日本電話××株式会社』なんて もっともらしい社名がついていて、明らかに振り込む側の勘違いを狙っています。  毎年、必ず届きますから、あれで商売になっているんでしょうね。
●「院長先生の研究の成果を、本にまとめませんか」
●差出人は××大学。 「私どもは、あなたを当学の、東洋医学名誉博士として推薦したいと思っております。つきましては下記までご連絡ください」
もっともらしく、校章が押してあり、「当学はアメリカ、カリフォルニアの××大学の 認可を受けています」という文言がついています。
明らかに、名誉名声をエサに大金をふんだくろうという魂胆です。だって、入会の手続きをしたいので、履歴書を送れ、などと小さく書いてあるんだから……。入会には入会金 ですよね。こっちの素性も知らずに、推薦なんかするな。
このことをカミさんに話したら、
「あ、そういうの私の所にも来たよ」
いろんな業界の名簿が、回ってるんですね。出所を辿って行ったら、黒い壁に突き当たるかも。