第06話|あん摩マッサージ指圧のはなし

あん摩マッサージ指圧のはなし

あん摩マッサージ指圧師という資格があります。
名前が示すとおり、あん摩、マッサージ、指圧の3種類の技術を身につけなければ、資格がもらえないことになっています。
だから学校の授業では、

『あん摩実技』
『マッサージ実技』
『指圧実技』

というように、それぞれ独立した科目をもうけています。
たとえば足についてだけでも、足のあん摩、足のマッサージ、足の指圧と、最低でも3通りの施術方法を習うことになります。  ただし、学校によってどの科目を重視しているかは異なります。だから同じ免許を持っていても、あん摩が上手な人、指圧が上手な人というふうに分かれて行きます。

では、それぞれの違いを、ざっと書いておきます

あん摩  生まれは中国古代で、日本に伝えられてから独自の発展を遂げたそうです。江戸時代には『座頭市』があん摩と賭博で稼ぎました。  衣服の上から行ないます。揉む、圧す、叩く、撫でるなどの手技を組み合わせて、身体の中心から指先に向かって施術します。

マッサージ 生まれは古代ギリシア。肌に直接施術します。手技の種類はあん摩と似ていますが、手の使い方などかなり違います。リンパにターゲットを絞ったり、オイルを用いて行ったりします。指先から身体の中心に向かって施術することになっています。日本ではマヒの機能回復などに取り入れられて、主に病院で発展したようです。  僕が卒業した学校では、ベビーパウダーのようなものを手につけて、手の滑りを良くしながら練習しました。2年生の時は、病院就職を希望する人のために、片マヒの介助のしかたなんかも習いました。

指圧 生まれは日本、1910年代だそうです。手技はひたすら、圧迫です。あん摩やマッサージの圧迫法を抽出し、オリジナルを加えて成立させたようです。「一人できる指圧」とかいって、テレビでも頻繁に取り上げられ、今や外国でも、「SHIATSU」という言葉がそのまま通用する時代です。  圧すだけだから簡単だろうと思うでしょう? でもそれは、ほんの入り口だけです。

とまあ理屈はいろいろあるようですが、結局のところ、主に循環系の機能改善を目指して、身体機能の不調を整えるのが共通の効果であり、目的です。

では、ここで問題です

クイック・マッサージは、本当にマッサージですか?

上の理屈から考えると、クイック・「マッサージ」と称して提供されているものは、ほぼ間違いなく、あん摩に近いものか指圧、またはその混合型です。サウナのマッサージも温泉マッサージも、本物のマッサージではありません。サッカーのハーフタイムなどにトレーナーが選手の足を施術している、あれは紛れもなくマッサージです(あれがすべてではありません)。  通りが良いから、どこでも「マッサージ」か「指圧」という名前を使っているようです。「あん摩」はダサい! 僕はあん摩が一番好きなので、この状態が悲しくてなりません。 (まれに「按摩」の一文字をとって『按××』なんて名前で開業する人もいます)

とりあえず、温泉やクイックなどで広く行われているものを、「指圧あん摩」とします。どういうふうに揉んだり圧したりするかは施術者によってまちまちですが、大きく分けると、あん摩揉み中心の人と、指圧を多く取り入れた、圧迫中心の人の2種類に分かれるようです。  あん摩揉みが好きな人が、あん摩を得意とする施術者に巡り会えれば、これは言うことありません。でも、
「あの人は上手だよ」
と聞いて予約して行ったのに、指圧が得意な施術者だったら、これは悲劇です。
「良かったよ」
と紹介されたら、その人があん摩型なのか指圧型なのか、
「揉まれた、それと圧された」
と確認してみると良いでしょう。また、施術者に対しても、
「おいらは指圧が好きなんだ。揉まれるとな、ぐるぐる目が回っていけねえ」
「兄ちゃん、あん摩揉みでやっとくれ。指圧でトロトロ圧されると、どうもじれったくてよう」
こんな具合に、施術前に注文をつけてみてください。